HotFarm

ブログにお引越ししてます。ほぼ幻水TKアスクロです。

散文チック(短め)でちょっと色っぽいものです。
クロ→アスっぽいような、そうでないような。



* 0cm *

どの角度から見ても、それが端正な顔であることに変わりはない。
だがこの角度から彼を見ると、自然と体が強張る。


それは決して、左足の薬指を這う彼の唇に反応しているからではなく。
漏れかかる熱い吐息がもっとこちらにきたらいいのにと不満を覚えているからではなく。


自分の前に跪く彼の姿を目に移すと、ざわざわとした焦燥が身体の内側を這いずり回る。
地に膝を付け、頭を垂れ、求めに応じる段になってはじめて顔をこちらへ向けあげてくる体勢。
女王とその臣下のひとりという関係であればそれは当たり前のポジションだ。階級がある社会に身を置く人間同士なのだから、それに違和感を覚えたとしても演じ続けなければいけないのは、この国での摂理。


だが、彼は駄目だ。
彼にだけはそうしてほしくないと、本能的に拒絶し筋肉が収縮するのだ。


「……ぁ」
強張った喉から、小さく声が漏れる。
足の甲に落とされるキスは心地いい。
『あなたのすべてを愛したい』という彼の言葉が具現化され嬉しいと、身体は正直に反応する。

しかし、駄目なのだ。
今のような、見下ろす先を定位置に落ち着けないで欲しい。
一段下がった位置にくだることで、埋められない距離をつくらないで欲しい。


踝を這う柔らかな舌の感触に、たえきれず足をひく。
踵を支える役目を失った褐色の掌が宙をつかみ、標的を失った唇が物足りなげに閉じられる。
そして―――瞳がこちらを『見上げて』くる。



ああ、だから。
その角度からの視線が。
いやなのだ。



彼の首に両腕を回し、引きこむ勢いのままにベッドに背中を預ける。
突然ふたり分の体重がかかり、ぎしりとベッドが悲鳴をあげる。

「―――お嫌、でしたか?」
腕の長さ分上の距離から、彼が視線を落とし尋ねてくる。
様子を探るような、ともすれば怯えているようにも聞こえる声。
彼の声が揺れているのは、自らの行為に自信が持てない不安感からなのか。
それとも―――視線の下に横たわる、彼が百万世界で一番愛していると自負している存在が、不満げな表情を浮かべているからか。

「……」
首に回していた腕をずらし、彼のあたたかい頬に触れる。


「せめてここでは……」
「ここでは……?」


「対等で、いたい」


ふたりの関係が突然『対等』でなくなったあの日。
女王の招致に応じファラモン城を訪れた彼が、まっすぐに視線を合わせようともしないで。
かつて彼の主にそうしていたように、足元に跪き、頭を垂れ、淀みなく他人行儀な挨拶を口にしたときから。


あの日から。
彼を見下ろすのが苦手になった。


女王とその臣下のひとりという関係であればそれは当たり前のポジションだけれども。
膝を付くことで身を遠ざけることを、二度と同じ高さで混じり合うことがない関係となることを、『かなしい』と感じた自分の心をはっきりと自覚できたから。


だからせめて、女王としての自分を脱ぎ捨てられる今だけは、対等でいたい。


しかし。

「対等でなど……無理です」
要求に拒む回答を、彼は口にする。


筋肉が軋む音が聞こえる。
「何故?」
あなたにお仕えしているのですから対等なはずがない、など対外的に使う言葉などききたくない。


決まっているではありませんか、と彼は言う。


「間違いなく俺の方が、あなたを愛しています」


ですから対等でなど無理なのです、クロデキルド。―――ゆっくりと紡がれる甘い言葉の最後には、なまえを付け加える。
そのなまえを、そのなまえの持ち主を、とても大切に扱うかのように。
いつもは無意識につけてしまう敬称を、おそらく意識的に、取り外して。


その気遣いは。
『あなたが望まない距離にはもう行かない』と誓ってくれているようで。
こわばった筋肉を、『かなしい』という感情を、やさしく溶かしてゆく。



「ならば……それを証明しろ」
対等を要求したくせに命令口調になる自分の声が歯がゆい。
「はい」
しかし、彼はしあわせそうに笑う。

しあわせそうに、長い褐色の指を金髪の間に通し、
しあわせそうに、足を絡め、腕を回し、抱きしめてくる。


そうして。
これ以上縮めることができないくらい、近い場所で、
これ以上もないよろこびを、わたしにあたえてくれる。





アスクロでおとなっぽいのを書くと、クロ様が無駄に思考にふけり、アスアドが頭の中お花畑という感じになるのがデフォな気がする…。ワンパターンよのう。

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